2012年5月18日金曜日

『愛と経済のロゴス』勉強会用メモ(1)

中沢新一の著書を読んでいこう、という勉強会(USTでも公開しています)にひっそりと参加させていただいています。
春休みなどをはさみ、しばらくお休みしていましたが、次回はカイエソバージュⅢ『愛と経済のロゴス』を扱うことになりました。

6月9日(日本女子大学)17:00~です。
情報は主催の近藤光博先生のブログに詳しくあがっています。
→http://lizliz.tea-nifty.com/

参加していただくメンバーが豪華なだけに、いつも発言を控えておりますが、せっかく本も読んでいるし、
色々と考えている(つもり)ので、勉強会にむけて、自分なりの考えを書いていこうと思います。



今回あつかう『愛と経済のロゴス』ですが、まず自分なりの問題というか、テーマを設定してみました。
二つあり、1)経済、とりわけ資本主義(≠市場主義)、2)貨幣、という非常に抽象的ですが、この辺りからアプローチしていきたいと思います。
もちろん、この二つ以外にも論点はありますが、これが自分としては枠組としても、関心との関連を考慮しても面白い、と思います。

この二つにアプローチするために、『愛と経済のロゴス』を中心に、いくつか課題図書を設けてみました。

ピエール・レヴィ『ヴァーチャルとは何か?』
網野善彦『無縁・公界・楽』
マルセル・モース『贈与論』

以上、三冊(『愛と経済のロゴス』も入れると四冊)です。
不定期ですが、勉強会までに、一冊ずつまとめて、意見を書いていこうと思いますが、今日はまず、全体像(?)を話しておこうと思います。

『愛と経済のロゴス』が提示していようとしている「世界観」(これは勉強会でもキーワードになっています)は、
「交換―贈与―純粋贈与」が相互に関係しながら生じてくるダイナミックな運動、そこから生じるもの、大まかには、これだと思います。

そこで私が設定した問題、1)資本主義(「経済」といったほうが良いかもしれません)、これと関連して2)貨幣が生じてきます。
これらが問題としてどのように生じてくるのか、そのあたりは、後日まとめておこうと思いますので、とりあえずは生じてくるのだと思ってください。
モース『贈与論』は直接、言及、引用されているので、この本との関連は読んでいただければ、一目瞭然ですが、残りの二冊の関連を明確にしておく必要があります。

「交換―贈与―純粋贈与」の間の相互作用という関係についての分析は、「交換―贈与」と「贈与―純粋贈与」という二つの関係に焦点をあて、行われています。
この二つの関係の説明は、経済との関連で考えられていますし、経済と関連している、ということは市場や資本主義などとも関連してくるテーマとなり得ます。
ちょうど、17日に中沢新一・安冨歩を中心に「無縁」の勉強会が開催され、参加させていただけることになったので、久しぶりに網野善彦『無縁・公界・楽』を読み返していたのですが、そこで「無縁」もしくは「無縁所」が「市」と関連していること、無縁と有縁がダイナミックな運動を行っていること、このことが繰り返し述べられています。ということは、無縁と経済(市)の発生は関連しているとみることができ、この関連を考えていたとき、「商品」、「貨幣」とは何か、という問題が発生し、それを考えるための手がかりの一つとして網野氏の著作を位置づけることができる、と思ったのです。

また詳しく書こうとは思いますが、この辺りまでは読んだことのある人なら、関連性を見出すことはできますし、私が何を考えようとしているのか、その辺りまで見通すこともできるのでは、と思います。とすると、レヴィ『ヴァーチャルとは何か?』、この一冊が妙に浮いているように感じられることでしょう。しかし、この本の中には「経済のヴァーチャル化」という章が存在しており、この本は私の今の研究テーマとも密接に関連しているので、個人的な興味という観点から関連付け手います。それだけではなく、もちろん親和性もあると思います。たとえば、「ヴァーチャル化」は「アクチュアル化」と共に、ダイナミックな運動を展開させているというレヴィの見解に基づき、「ダイナミックな運動」ということを介して、『愛と経済のロゴス』と『ヴァーチャルとは何か?』を(パワープレイでしょうが)おそらく結びつけて語ることもできる。そして、自身で設定した「貨幣」という問題を考える上でも、有効な思想を引き出せると思っています。
これは確認の必要性がありますが、レヴィは「貨幣」自体は富ではなく「富のヴァーチャル化」として考えている箇所があったはずです。このとりわけ、現代特有の「ヴァーチャル化」という考え方は「経済」というダイナミックな運動と「貨幣」という設定された問題に答える上でも、非常に有効な概念だと予想しています。

非常に、抽象的かつ大雑把な流れではありますが、『愛と経済のロゴス』勉強会までの私の研究計画です。
もし、興味のある方はいらっしゃって下さっても(もちろん)結構ですし、USTでみて頂いても結構です。そのための一つの手がかり、足がかりとしてこれから書いていこうと思うまとめが役立てば……と思っています(当然、自分の研究のためでもありますが)。

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